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2011年05月08日

不機嫌な時代

有機野菜
不機嫌な時代
 『不機嫌な職場』という本が売れているそうだ。前には『不機嫌な時代』という本もあった。この「不機嫌」という言葉がもっとも相応しい時代は、現在ではないだろうか。
 会社の業績はこれからの株安と円高のさらなる更新によりかつてないほど悪化してくる。そうなると、年末賞与どころではない。そんなものが出るとか出ないといったことより、リストラで、失業者で正月を迎えることを心配したほうがいい。首が繋がったとしても、全社員が減給だ。会社の一大事を乗り切るためには、給与を半分にしても生き残らなくてはならない。
 それではとても生活はできない。猫ちゃんや犬様の餌代にも事欠く。どうしたらいいと、猫鍋とか、犬のステーキもふと考える。
 ボーナス払いの家のローンはどうしてくれる。毎年予定している年末賞与が出ない。それをあてにしていて、支払いもいろいろと年末にしてあるのに。
 息子が大学受験だ。だのに、入学金も用意できていない。国立ならまだしも、滑り止めの私立だったら、授業料も高いだろう。仕送りはそれに加算される。
 娘の嫁入りはいくらかかるのだろうか。預貯金はすべて使い果たしている。貯えも底をついたときに、結婚するなど、どうしたらいい。
 お母さんは家計のやりくりがつかないで、自分の洋服も買えない、パーマにもゆけない。パートで働きに出ようといっても、いまはパートすらない。内職の仕事を見つけたら、騙された。在宅ワークなんて、嘘ばっかり。
 お父さんは、上司にできもしないノルマを課せられて、目的達成しないと会社に戻れないで、公園のベンチにぽつりと座っていた。営業は厳しかった。どこに行っても、渋い顔。経費節減と予算削減。契約はこの一週間全然とれない。このままでは、引導を渡される。まだ降格の配置転換で、裏方のほうがいい。もしも、僻地に飛ばされたらー。間違っても青森なんかへは行きたくない。単身赴任で行っても、もう二度と本社には帰れない。
 会社の人間関係は極端に悪くなる。協力しあっていたのが、みんなバラバラの個人プレーばかり。エゴ剥きだしで、みんな自分のことばかり考えている。人のことなんかどうでもいい。同情は禁物だ。保身に務めて、自分に不利になることだけはしまい。
 同僚と飲みに行くこともなくなった。いまは、自分以外、社内はすべて敵ばかり。今度は誰がリストラされて、左遷させられるのか。上司もその嫌な役目で、毎日ストレス。胃がきりきりと病んだ。胃薬ばかり呑んでいる。
 外ではめっきりと飲まなくなった代わりに、家で安いビッグサイズの焼酎を買ってきて、一人、テレビの前でちびりちびりとやっている。かつての社用族で、クラブに行ったのが嘘のようだ。
 会社の業績は酷いもので、工場があちこち閉鎖される。職工の大量解雇。かつての同期入社のエンジニアたちが、バサバサと首を切られている。ぞっとする。次は自分の番か。
 
 ケータイ電話の請求金額が多いので注意したら、親子喧嘩が始まった。言ってはならない、「誰のために学校に行けると思っているんだ」が出た。そして、「出てゆけ」だ。息子はバッグひとつで出ていった。「何もそこまでしなくても」と、今度は夫婦喧嘩が始まる。「おまえも出てゆけ」と、亭主は怒ったことがないのに、やってしまった。結婚して初めての禁句。「言われなくても、実家に帰らせていただきます」と、女房も出てゆく。
 家族もバラバラ。みんな金がないことで、ぎすぎす、ぎくしゃく、会社も家族も人間関係から壊れてゆく。金の切れ目が縁の切れ目。いままで、どこでも金だけで動いていた。金が潤滑油であった。
 苛々と貧乏ゆすりが、あちこちの家庭で起こる。それで最近は地震が多い。どうやら大地も貧乏ゆすりをしているらしい。
 お父さんの苛々は、外でパチンコ、焼き鳥屋で酒を浴び、絡んで客と喧嘩だ。
 気が付いたらボコボコにされて、路上でぶっ倒れていた。服はどろどろ、顔は青たん。おいおいと泣く。
 新聞では、大手上場企業の倒産が、びっしりと載りきれない。銀行から保険会社まで次々に倒産だ。取り付け騒ぎで、銀行に預金者が並ぶ。
 コンビニ強盗からタクシー強盗が頻発し、少年たちの集団万引きから、公共施設が壊される。ガードレールからマンホホールの蓋まで、鉄は各地で盗まれて売り飛ばされた。街はボロボロ。ガタガタ。
学校では生徒が暴れている。若者は不平不満から切れまくり。殺されまいと、先生は完全防備で授業に臨む。頭にはヘルメット、全身にプロテクター。時には職員室にバリケードを組んで、タガーナイフで暴れる生徒から身を守る。そんな先生の権威も地に落ちて、すっかりと萎縮し、ノイローゼ。いまや不登校教師が五万といる。
 主婦が、スーパーから買ってきた食品で当たった。
「隣の奥さんが当たったんですってよ」
「まあ、これで、この町内で七人目よ」
 年末ジャンボに当たったのではない。食品に混入していた劇薬で当たった。
「わたしも当たったけど、あれって、軽いと痺れていいわよ」と、まるで危険の感覚が快楽になってきている。とはいえ、疑心暗鬼で、どれも信じられない。たまたま当たった人はおめでとう。食べる前に、まずは匂いを嗅ぐ習慣。それから、自分では食べない。子供にも食べさせないで、最初に亭主に食べさせる。少し様子を見て、安全と判ると、さあ、いただきましょう。
 
 電話で息子から金送れ。怪しい。
ーあんた、本当にタクなの? だったら、パスワードを言いなさい。
 相手は沈黙。パ、パスワード?
ーほら、贋物とバレた。我が家ではこんなこともあろうかと、家族でパスワードの合言葉を話すようにしているのよ。ホホホホホ。
 家族でも信用ならない。本物か贋物か。久しぶりに帰って息子が本物だろうかと、母親が病院に連れてゆく。
「何すんだよ」
「あんたが、本当の息子かどうか、DNA鑑定をしてもらうのよ」
 
 世の中はむしゃくしゃしてくる。テレビは消したい。どこも暗い、衝撃的な事件ばかり。詐欺に横領、放火殺人。政治番組だけがノーテンキで、隔絶した世界に住んでいる異星人の討論だ。
 年寄りから税金。年金は減らされて、どうやって食っていったらいいんだ。病気になっても、ただ、死ぬのを待つだけ。
 病院も医者と看護師が少なくて、みんな過労でふらふら。このままでは、患者より先に死ぬ。休ませてくれ。
 みんな、日本全国不機嫌だ。こんなときに笑っていられるやつは誰だ!


 




Posted by gldbglu8 at 14:42│Comments(0)
 
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